症例対照研究

疾病の原因を過去にさかのぼって探そうとする研究。目的とする疾病(健康障害)の患者集団とその疾病に罹患したことのない人の集団を選び、仮説が設定された要因に曝露されたものの割合を両群比較する。疾病の頻度が低く、症例が母集団の全患者を代表し、対照が母集団を代表する場合はオッズ比(相対危険の近似値)から因果関係の推定が可能。
症例対照研究の結果は四分表(2×2表)でまとめられる。

症例対照研究の例

肥満と心筋梗塞の発症に関する症例対照研究

[ Washio M et al: Past history of obesity (overweight by WHO criteria) is associated with an increased risk of nonfatal acute myocardial infarction, a case-control study in Japan. Circ J 68:41-46,2004 ]

【要約】

この研究は、過去と現在の肥満(BMI≧25.0kg/m2)と心筋梗塞のリスクの関係を明らかにすることを目的とした。福岡都市圏の22病院に1996年9月~1998年9月に入院した40~79歳の急性心筋梗塞患者で、過去に心筋梗塞の既往のない660名から生活暦(飲酒、喫煙など)、既往歴(高血圧、糖尿病、高脂血症など)、身長、体重、10年前の体重などの情報を収集。同時に、性、年齢、居住区域をマッチさせた対照群1,271名からも同様の情報を得た。症例対照研究の結果、10年前の肥満は心筋梗塞のリスクを上昇させたが(オッズ比1.72)、現在の肥満はリスクを上昇させなかった(オッズ比1.01)。
(本研究では、入院する前に死亡した症例、重症のため質問票による調査が不可能であった症例は除外。そのため、現在の肥満が危険因子とならなかった可能性は完全に否定できない)

 

「鷲尾昌一:はじめて学ぶやさしい疫学(日本疫学会監修), 改訂第2版, p57-65, 2010, 南江堂」より許諾を得て抜粋し転載.

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